避難所・避難⽣活学会からの提⾔

阪神淡路⼤震災、新潟県中越地震、東⽇本⼤震災などを経験してもなお熊本地震では災害関連死が多く、⾞中泊によるエコノミークラス症候群も多数発⽣していた。災害による直接死を免れながら、避難所などで多くの命が失われ、被災者にとって避難⽣活が第⼆の、あるいは最⼤の災害となっていた。減災、すなわち災害関連死をなくすために、以下に提⾔する。

提言_図

【提⾔】

(1) 安全な避難所環境を⽴ち上げるためには、現⾏の被災⾃治体からの要請に基づく⽀援ではなく、国は主体的な判断で、T・K・B(トイレ、キッチン、ベッド)の迅速な供給を⾏う
(2) 上記の避難所運営を円滑に実施するために、専⾨技能を有した「職能⽀援者」を平時から登録し、有事に被災地へ派遣できる体制を国は整える
(3) ⾃治体は災害救助法や災害関連法規に精通した専⾨職を置く

【⽬標】

災害関連死をなくすために、被災者に安全な避難所環境が提供されるよう質・量・迅速さを担保すること

【現状の課題】

被災地⾃治体からの要請をもとに⽀援が⾏なわれたため、⽀援が実施されるまで、被災者は危険な避難所環境に数⽇間置かれていた。
②災害直後に業務集中で混乱した被災地⾃治体は、迅速な災害対応と適切な避難所運営を担うことは困難であった。
災害救助法や災害関連法規に精通した専⾨職を⾃治体は常置していないため、被災者救護が有効に⾏なわれなかった。

【具体的⽅策】

必要な⼈材と物資・設備に関し、国がイニシアチブをとって、有時には迅速に被災地に投⼊し、平時には備えを充実させる。この⽅策の構成要素は、「モノと⼈」であり、両者が「連動」することによって最⼤の効果を発揮する。

①モノ;避難⽣活に必須の物資「TKB(トイレ、キッチン、ベッド)」の迅速な供給。

トイレ;不衛⽣な環境は確実に被災者の健康を蝕み、排泄忌避は⽔分摂取抑制となって脱⽔をもたらす。また、衛⽣的な⽣活の確保は⼈の尊厳を保つ必要条件である。
キッチン;⽔と適切な栄養は⽣命維持に必須である。安全な避難⽣活が維持できるよう、調理された⾷事の提供と衛⽣環境を保てる⾷事スペースの設置を図る。
ベッド;雑⿂寝による健康被害は明らかであり、避難⽣活を維持するためには避難所にベッドを設置することが、内閣府「避難所運営マニュアル」に明記されている。

②⼈;「職能⽀援者」+「災害関連法規に精通した⾃治体職員」+「⼥性避難所運営スタッフ」(仙台防災枠組2015 より)

内閣府による「専⾨家派遣事業」(平成23年)を発展させ、避難所の⾐⾷住を⽀える職能⽀援者(⺠間⼈を含む)登録制度を作る。平時においては国が教育・訓練を⾏ない、有事には登録者を被災地に派遣し、安全な避難所設置・運営を⽀援する。また、国は災害救助法や関連法規に精通した災害担当職員(危機管理監など)を各⾃治体に常時配置するよう定め、研修を⾏い、その練度を管理する。これにより、被災者救護の質の均沾化を確保する。さらに、避難所運営者には⼥性スタッフを加え、⼥性の視点を活かした避難所⽣活の質の確保を図る。国はそれを可能とするため、平時に研修を⾏い、災害リスク削減に向けた能⼒開発を担う。